【新刊】「人生、60歳まではリハーサル」いつもそばに置いておきたい一冊

私はアメリカを舞台にしたベタなサクセスストーリーが大好きだ。それが作り話であろうと、実話であろうと関係ない。とにかく見たり読んだりすれば、最後には心がスカッと爽快な気分になり、そして何よりも成功を掴んでいくステップにワクワクし、全身トリハダが立つような興奮を味わう。そして心がグワーっと熱くなって目頭が熱くなってしまうのだ。

前置きが少しズレたような気もするが、この著書「人生、60歳まではリハーサル」は90年代前半、日本にサルサブームを巻き起こした日本人の人気サルサバンド「オルケスタ・デ・ラ・ルス(以下、デラルス)」のメインヴォーカルをつとめるNORAさんの自伝。

序盤はニューヨークをはじめ、アメリカや中南米でデラルスが大ブレークし、超人気バンドとなるまでのストーリーがたくさんのエピソードと共に書かれている。

特に感服したのが、NORAさんが"NYサルサを探る旅"へ出たときに「NYでライブをやりたい」という一心でサルサ界のドンである有名なプロデューサーに直接アポをとり、デモテープを持ち込んで売り込みに行ったという行動力。まだ売れないミュージシャンが踏むありがちなステップなのかもしれないが、それをNYで、しかもカタコトの英語でやるというところに計り知れないパワーを感じるのだ。そして少しずつチャンスと成功をつかんでいく様がいかにもアメリカのサクセスストーリーらしく、私にはトリハダ級のワクワク感だった。

このような「当たって砕けろ、やってみなきゃわからない」的な話は、何かを始めたいけど何らかの理由でためらっているような人にとっては、きっと背中をひと押ししてくれるようなエピソードであるに違いない。

また、NYクイーンズでのファーストライブでは、日本人の歌うサルサで初めてラティーノが踊りだした時、嬉しさのあまりNORAさんが涙を流しながら歌ったというシーンがあった。読んでいて喉の奥があつくなった。海のものとも山のものともつかない東洋人の歌うサルサで、NYサルサ本場のラティーノたちの心を揺れ動かしたのだ。苦労があって報われたからこそ得られる感動ほど素晴らしいものはない。

この本はとても読みやすい。目次をパッと見たときにあまりにも多い見出しの数にビックリしたけども、その見出しのタイトルは「早くこの章を読んでみたい」と思わせるワクワクするものが多かった。そして実際、見出しごとにそれぞれのミニエピソードがありどれも面白く、ラテン諸国の紹介も織り交ざった興味深いものばかりだった。

また、豪華なスターとの共演エピソードも多く、数々の有名サルサ歌手の名前も登場する。彼女を長年プロデュースしたセルジオ・ジョージの名前もはじめは全くピンとこなかったが、途中読み進んでいくうちに、あのマークアンソニーのプロデューサーでもあるセルヒオだったことに気づいた。マークアンソニーは曲の中でもセルヒオの名を呼ぶことがあり「セルヒオって誰?」って思っていたのだが、この本を通して知ることができた。そしてNORAさんは本当にたくさんの有名人との交流がありこんなにすごいかただったのかと、サルサ歴20年以上にしながら今さら知った自分をとても恥ずかしく思った。

本の文章によるとデラルスの絶頂期は1993〜1994年ごろ。私がサルサに出会ったのは1995年ごろだったと記憶している。デラルスの絶頂期より少し遅れていたからか、私が初めて購入したCDはグロリア・エステファンや、当時まだスター街道を登り中だったというマークアンソニーなどだった。デラルスの曲や存在も知っていたがCDを手にしたのは後に中古で1枚。「サルサに国境はない」が収録されたアルバム「SALSA NO TIENE FRONTERA」だった。そして時代の流れで楽曲ダウンロードが主流になった時にそのCDも手放してしまったことを今となってはとても後悔している。

この本のタイトルにもなっている「人生、60歳まではリハーサル」という章の中に、伝えたいことの全てがつまっている気がした。このセリフをNORAさんへ語ったキューバ人のミュージシャン、コンパイ・セグンドのセリフを読んでいるだけで、まるで彼が自分のすぐ近くにいて私にも同じことを語ってくれているような感じがした。30代後半でメキシコ生活にピリオドをうち、自分の人生やりきった感でいっぱいでいまだに先が見えなくなっている私。そしてNORAさんと同じように、40歳をすぎてこの先は落ちて行くばかりだと思っていた私の心も少しスッキリとして楽になった気がする。

この本と出会えたのを機に、今後のデラルスの活動にも興味がわいたのと、あとやはり私はライブが好きなんだなと再認識した。NORAさんと同じように大所帯の生バンドサルサの演奏を聞くと勝手に体がリズムにのりだして、一緒に口ずさみたくなってしまうのだ。久しぶりにまたライブに行きたくなった。

サルサは人生をポジティブに生きるための言葉やラテンなエッセンスのつまった素晴らしい音楽だったんだなってこの本を通して思った。そんなサルサ音楽を通して世の中の人たちをハッピーな気分にできたらという思いで活躍されているNORAさんはとても素敵な人。ラテン的に生きる人、生きたい人のためのバイブルになりそうなこの一冊。おすすめです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。